そんな地元への想いが、ふじよだ養鶏場の始まりでした。
園主の一人、余田慎太郎は枚方市内で生まれ育ちました。そんな余田が若かりし頃、海外を旅する中で出会ったのは、自分の故郷に誇りを持つ多くの人たち。「お前の帰郷はどんな国だ?」そう聞かれるたび、生まれ育った町に対して語れる言葉の少なさや、自分の知識の浅さに気づいたといいます。この経験をきっかけに「自分も地元をもっと好きになりたい」と心に決め、やがて「枚方を365日楽しい町にする」というプロジェクトが誕生しました。
飲食業界で長年腕をふるい、自らの店も複数展開していた彼もまた、「一次産業に関わりたい」という夢を持ち続けていた一人でした。2018年、共通の知人の紹介で出会った二人は、互いの熱意に触発されて意気投合。「これまでになかった地元の特産品を一緒につくろう!」と、ふじよだ養鶏場の構想が動き出しました。
二人が養鶏に目をつけたのは、数ある選択肢の中から、より地域に根差したもの、かつ手応えを感じられるものを模索していた結果でした。中でも「アローカナの卵」との出会いは衝撃的だったのです。
たまたま二人で訪れた、ある高級ラーメン屋で口にした煮卵。その美味しさに感動し、「僕たちもこの卵を育てたい」と心が大きく動かされたのです。
しかし、養鶏を始めるには場所が必要。
電気もガスも水道も通っていない大自然の場所。「ここならゼロから思い通りの養鶏ができる!」と心を決め、小屋を建て、鶏を迎え、少しずつ一歩ずつ、平飼いの環境を整えていきました。もちろん養鶏場の運営は順風満帆なわけではありません。アローカナは臆病な性格で、音や光にも敏感です。だからこそ、鶏たちがのびのび過ごせる環境づくりには、一切の妥協が許されません。また、卵の質を決める飼料もすべてが自家製。発酵飼料には牡蠣殻、大麦、ぬか、有機野菜などをブレンドし、毎回6トンをも超える飼料を手作業で作っています。
小屋づくりに追われる猛暑の夏、寒さで雛が命を落としてしまった冬——。
期せぬ出来事の重なる経験は二人にとって試練であり、暗中模索の連続でした。それでも歩みを止めず、話し合いを重ねながら試行錯誤を続ける日々。
毎日の作業は想像以上に大変ですが「感動する卵を枚方の特産品にして届けたい」というブレない情熱が、二人を突き動かし続けています。
美味しい卵で人を笑顔に、そして人生を少しでも豊かに。感動するほどの美味しい卵を届けることで、世の中に笑顔を増やし、卵のようにまぁるい世界を創り出していくことこそが、自分たちのできる社会貢献であると信じています。
そんな気持ちを胸に、今日もふじよだ養鶏の園主二人は鶏たちと真っすぐに向き合いながら、大切な命を育んでいます。枚方の大自然と人の手の温もりで育てる、幸せの青い卵。ふじよだ養鶏のストーリーは、まだ始まったばかりです。
園主:余田 慎太郎(よだ しんたろう)・藤吉 貴明(ふじよし たかあき)ともに1982年生まれ。枚方出身で工務店を営んでいた余田と、寝屋川出身で飲食店経営を長年続けてきた藤吉。まったく異なる業界にいた二人が出会い、意気投合したのは「地元・枚方をもっと面白くしたい」という共通の想いがきっかけでした。
枚方を365日楽しめる町にする!ーーそんなビジョンのもと活動する中で「誇れる特産品が枚方には少ない」という気づきが本プロジェクトの始まりに。
地域資源を活かしながら、あえて手間のかかる自然養鶏という道を選んだ二人。魅了されるほどに美しく、濃厚な味わいを持つ希少な鶏「アローカナ」の味に惚れ込み、飼育から環境、餌づくりまで、徹底的にこだわり抜いた卵づくりがスタートしました。
大自然豊かな山郷で、自ら小屋を建て、数えきれない試行錯誤を経て完成した「ふじよだ養鶏場」。理想の環境を一からつくり上げることに挑んだその背景には「ふじよだの卵を通して、食卓に感動を届けたい」というまっすぐな情熱があります。
「この卵、うちの町で作ってるんだよ」地元の子どもたちが、そんなふうに誇れる存在になることを願ってーー。ふじよだ養鶏場の挑戦は、これからも続きます。